耕作放棄地に侵入した樹木の枝を売ってみよう!

樹木の枝の販売

今後も増加が懸念される荒廃農地への有効な対策が課題となっていますが、山間にある荒廃農地は農業に適した場所にある農地と比べて、対策も後手になりがちです。一方、樹木の生える荒廃農地は農作物栽培には困難な状況ですが、生えた樹木を販売でき、わずかでも所有者に経済的利益をもたらすことが出来れば、荒廃農地に関わり、管理を行うきっかけになる可能性があるのではないかと考えました。


自生種のシキミを活かした栽培事例(南あわじ市灘来川)

南あわじ市灘地区のシキミ栽培は放棄果樹園に生えたシキミに加えて山引き苗や種子から育てた苗も利用しています。自生種を活用し、小規模で取り組める点が参考となり、それを手本に研究を行いました。

放棄果樹園からシキミ栽培への移行例

販売した樹種

販売可能な樹種として関西では仏事に使用されているヒサカキ(シャシャキ)を選定しました。また日持ちのするカクレミノとネズミモチも販売してみました。

ヒカサキ(シャキシャキ)

ヒカサキ(シャキシャキ)

カクレミノ

カクレミノ

ネズミモチ

ネズミモチ



元町マルシェでの販売

元町マルシェではヒサカキ(シャシャキ)を150円で、カクレミノとネズミモチを50円で販売、毎月20本程度を5か月間出荷した結果、9割以上の枝が売れました。お盆やお彼岸、月初めに仏壇等の花を替える時など、年間を通してヒサカキは購入されることがわかりました。またカクレミノはお茶会の席に飾る葉として使われているのではないか、とも思われました。

元町マルシェ外観
樹木の枝の販売の様子

今回、販売実験に際して荒廃農地を提供してくださったHさんに、今回の成果を説明すると、はじめは消極的な意見でしたが、「この場所だけでなく周辺の山も含めて所有しており、もし需要がありまとまって売れる時期ならば採って売りたい。今回の販売金額を見ると、十分小遣い稼ぎにはなりそうだと思う」「集落で取り組めば各戸の出荷は少量でも定期的に出荷できるかもしれない」との意見が徐々にみられるようになりました。荒廃農地の所有者が自身の土地に関心を持ち、今後の利用につながれば、周辺の管理を行う可能性や獣害抑制等の効果が見込まれ、周辺にもメリットがあると思います。ぜひ、このような活動を、荒廃農地を所有する方々に試していただきたいと思います。


プロジェクト概要

・主担当:山本あゆみ

・フィールド:淡路島全域

・活動期間:20173月~20182

・受賞:2017年度 淡路景観園芸学校景観園芸賞、2020年度 日本造園学会ベストペーパー賞