玉ねぎ小屋の乾燥貯蔵ランドスケープが面白い!

玉ねぎ小屋
玉ねぎ小屋

淡路島の特産品である玉ねぎは、伝統的に「玉ねぎ小屋」で乾燥・貯蔵されます。玉ねぎ小屋とは、収穫した玉ねぎを10玉程度束ねて吊るし、乾燥と保管を目的とした、壁のない小屋のことを指します。このような吊り玉ねぎの風景は、収穫時期の5~6月頃から出荷までの1~2か月程度の間に見られ、淡路島の初夏の風物詩となっています。


玉ねぎ小屋の配置には、2種類のタイプがあります。

玉ねぎ小屋の配置には「分散型」と「整列型」の2種類のタイプがあります。分散型というのは三原平野に広く分散的に分布しているタイプ、整列型というのは小屋が一列に並んで配置されているタイプです。分布の割合は、分散型が94.3%(1,031戸/1,093戸)、整列型が5.7%(62戸/1,093戸)と、圧倒的に分散型が多く存在しました。

分散型

分散型たまねぎ小屋
分散型たまねぎ小屋の位置

整列型

整列型玉ねぎ小屋
整列型たまねぎ小屋の位置


玉ねぎ小屋の素材について

玉ねぎ小屋の素材は、屋根と柱の素材の組み合わせで、「瓦+木材」、「スレート波板+木材」、「スレート波板+鉄骨」の主に3種類のタイプがあり、それぞれの割合は順に18.1%、14.2%、65.5%と、6割以上の玉ねぎ小屋が「スレート波板+鉄骨」で出来ていることがわかりました。一方、昔ながらの「瓦+木材」で出来た玉ねぎ小屋は18.1%と少なかったですが、これは圃場整備の時期と関係があると考えられます。具体的に、圃場整備が未整備の地区が20.9%と多い阿万では、「瓦+木材」でできた玉ねぎ小屋の割合が23.9%であるのに対し、未整備の地区が11.1%と阿万の約半分の北阿万では、「瓦+木材」でできた玉ねぎ小屋の割合も11.3%と少ないことがわかりました。このことから圃場整備が入ると小屋も一緒に作り替えられている実態がうかがえます。

瓦+木材素材の玉ねぎ小屋

瓦+木材

スレート波板+木材素材の玉ねぎ小屋

スレート波板+木材

スレート波板+鉄骨素材の玉ねぎ小屋

スレート波板+鉄骨



各集落における稲わらを置く玉ねぎ小屋の数と牛舎の数の関係

各集落における稲わらを干している玉ねぎ小屋の件数と牛舎の戸数との関係をみてみると,両者の相関係数はr=0.750と強い正の相関があることがわかりました。稲わらを玉ねぎ小屋で干して、それを牛の餌にするという繋がりが、小規模集落の中で展開されていることがうかがえました。さらに牛糞は戻堆肥として春に畑地に漉き込んでいることも聞き、水稲、玉ねぎ、畜産が循環している南あわじ市らしい生産システムが、玉ねぎ小屋のある風景から透けて見えることも大変おもしろい特徴かと思います。

玉ねぎ小屋と牛舎の数の関係図
水稲とたまねぎの二毛作農地の図


玉ねぎ小屋の継承に向けて

玉ねぎ小屋の継承に向けて必要な要件を捉えるために、小屋を積極的に活用している農家さんにお話を伺いました。結果、島外住民を対象にした畑と玉ねぎ小屋の貸し出しの仲介、集落の自治会活動の情報提供などの役割を担う生産者との信頼関係を持っている地元コーディネーターとの連携が重要であることなど、移住者が地主との信頼関係を築くことが玉ねぎ小屋の継承に重要であることがわかりました。また、定期的に利用することによる玉ねぎ小屋の劣化防止が生産者の小屋を貸し出そうとする意欲につながるということ、農地に建っている玉ねぎ小屋を利用しない場合は玉ねぎ小屋を取り壊し農地として原型復帰する必要があるが、貸し出すとその手間が省けることがわかりました。

 

現在は栄養面のみで吊り玉ねぎが価値づけされていますが、玉ねぎ小屋の乾燥貯蔵ランドスケープなど多面的な価値づけをし、吊り玉玉ねぎをブランド化することで、冷蔵保存の玉ねぎよりも高値で売れるようにしていければと思います。


プロジェクト概要

・主担当:高橋里佳(研究科10期生)

・フィールド:南あわじ市阿万地区・北阿万地区

・活動期間:2019年9月~現在に至る

・受賞:2019年度 日本造園学会関西支部賞、2019年度 淡路景観園芸学校景観園芸賞