沼島の集落でジオツーリズム!

沼島で使われている岩石

南あわじ市沼島は三波川変成帯に位置し、結晶片岩である緑色片岩や、紅れん石片岩、石英片岩などが多く産出されます。また、沼島の外周に位置し国生み伝説の残る上立神岩や、枯山水でできた神宮寺庭園、世界で沼島とフランス、カナダの3ヶ所でのみ発見され、地質的に非常に価値があるとされるさや型褶曲などの岩石にまつわる地域資源が豊富にあります。これらを活用して、漁師の方々が普段使用する漁船により沼島周囲を巡るクルージングやボランティア団体「ぬぼこの会」による島内のボランティアガイドが展開されています。

 

一方で沼島の集落を見渡すと、住宅の基礎や石垣として岩石が利用されていたり、漁をするときの重しに石が使われていたりと、生活の中に岩石がふんだんに使われていることがうかがえ、実際に調べてみることにしました。


集落内の294か所で岩石が使われていました。

岩石の分布調査により、沼島では主に「黒色片岩」「紅れん片岩」「蛇紋岩」「緑色片岩」「石英片岩」といった、片岩が多くみられました。また、294か所で岩石が発見され、それらは集落内に広く分散的に分布していることがわかりました。特に神社仏閣には多くの岩石資源が分布していることがわかり、具体的には「庭石」、「敷石」、「墓石」、「砂利」などが確認できました。

沼島ジオツーリズム

沼島の地質の特徴として、島の北部に緑色片岩が存在することが挙げられ、よって集落の北部にはこの緑色片岩が混在したカラフルな石積みを多くみることができます(例:弁財天神社の石垣)。一方、南部の石積みをみてみると、泥質片岩を主とした薄い灰色から黒色をしていることが多い(例:沼島八幡神社の石垣)。このように場所によって石垣や石積みの色が違ってくるということは大変ユニークであると思います。

石垣
石積み


沼島の生活にみられる岩石一覧

沼島でのField Tripの実施

ルイジアナ州立大学でランドスケープデザインを指導されているBruce G. Sharky氏をお招きし、沼島でField Trip プログラムを実施しました。参加者は淡路景観園芸学校と大阪府立大学の学生13名で、スケッチの技法を学ぶプログラムとしました。

Field Trip プログラムの様子
Field Trip プログラムの様子

スケッチを行う上で次の3点が求められました。まず“ディテールは必要とせず、5分以内と素早く描くこと”が求められました。ワークショップなどを行うまちづくりの現場では街の個性や提案イメージをその場で住民らと共有することが求められることから、素早く描くことが重要とされました。次に“構成(様々な風景を構成する要素の関係性)を大切にすること”が求められました。スケッチは建物、緑地、道路などの構成を理解し表現するための訓練であると言えます。描いた風景を見た人がすぐに“それはここの風景である”と認識できることが重要で、それが街の個性でもあります。最後に“ヒアリングで聞いたことなどスケッチで表現できないもの(あるいは補足事項)は文字で表現すること”が指摘されました。

スケッチ
スケッチ
スケッチ

プロジェクト概要

・主担当(岩石調査):石塚昇路

主担当(Field Trip):嶽山洋志、光成麻美

・フィールド:南あわじ市沼島

・活動期間:20164月~現在に至る

・受賞:2016年度 日本都市計画学会関西支部研究発表会奨励賞